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東京高等裁判所 昭和55年(ネ)7号 判決

控訴人

山崎ふさの

右訴訟代理人

中川了滋

被控訴人

保谷市

右代表者市長

都丸哲也

右訴訟代理人

永野謙丸

外五名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は控訴人に対し金六七〇万三二〇〇円及びこれに対する昭和五五年五月一四日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。との判決

二  被控訴人

控訴棄却の判決

第二  当事者の主張

一  控訴人

1  第一次的請求の請求原因

(一) 控訴人は(昭和四三年四月被控訴人の学校給食作業員に採用され、同年一〇月から保谷市立保谷第二小学校に配属され、同小学校の給食作業に従事していたものであるが、被控訴人は、控訴人を昭和五〇年一二月三一日付で解雇したとして、昭和五一年一月一日以降の給料を支払わない。控訴人の給料は昭和五〇年一二月当時一か月一三万六八〇〇円であつたので、控訴人は被控訴人に対し昭和五一年一月一日から同五五年一月末日までの未払給料合計金六七〇万三二〇〇円及びこれに対する各支払期の後である同年五月一四日から支払済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(二) 被控訴人が控訴人に対してしたとする解雇は左記事由により無効である。

すなわち、控訴人は昭和五〇年一二月三一日当時第三腰椎圧迫骨折により療養のため休業中であつたところ、右骨折は、同年八月二八日又は同年九月一二日校舎の廊下でバケツに水を入れて運搬中転倒して腰を打つたことに起因するもので、業務上の負傷であるから、右解雇は労働基準法第一九条第一項に違反する。

2  第二次的及び第三次的請求の請求原因

原判決五枚目(記録一五丁)裏七行目「前記合計損害金」から同九行目「支払ずみまで」までを、「前記合計損害金一六九五万〇七七六円の内金六七〇万三二〇〇円及びこれに対する本件事故発生日の後である昭和五五年五月一四日から支払ずみまで」と改めるほか、原判決が(請求の原因)として摘示するところと同一であるから、くれを引用する。

二  被控訴人

1  控訴人の第一次的請求は、当審において追加的に変更されたものであるところ、右請求は、控訴人が原審以来請求してきた訴外倉田の加害行為を理由として主位的に国家賠償法第一条第一項に基づき、予備的に民法第七一五条第一項に基づき損害賠償を求める請求とは、請求の基礎に変更があるから、右訴の変更は許されない。

2  第二次的及び第三次的請求の請求原因に対する被控訴人の認否及び主張は、原判決が(請求原因事実に対する被告の認否)及び(被告の主張)として摘示するところと同一であるから、これを引用する。

第三  証拠関係〈省略〉

理由

一控訴人の第一次的請求は、当審において追加的に変更されたものであるので、まず右訴の変更の適否について検討するに、右新訴は、昭和五一年一月一日から同五五年一月末日までの間の未払給料の請求である(控訴人の主張によれば、控訴人は地方公務員であるから、正確には地方公務員としての給与の請求であり、行政事件訴訟法第四条の当事者訴訟として審理裁判されるべきものである。)のに対し、原審以来の旧訴は、本件事故に係る訴外倉田の加害行為を理由として主位的に国家賠償法第一条第一項に基づき、予備的に民法第七一五条第一項に基づき損害賠償を求める請求であるのみならず、控訴人は、右未払給料請求につき、控訴人に対する昭和五〇年一二月三一日付の解雇(控訴人の主張によれば、控訴人は地方公務員であるから、正確には行政処分としての免職処分)が労働基準法第一九条第一項に違反し無効である旨を主張しているが、その主張する業務上の負傷は、昭和五〇年八月二八日又は同年九月一二日校舎の廊下で水を運搬中における転倒による負傷であつて、旧訴に係る本件事故とは全く関連がないところの異なる日時における異なる態様での負傷を主張しているのであるから、右無効原因たる事実を考慮に容れても、右訴の変更は、請求の基礎に変更があることが明らかである。

してみれば、右訴の変更は許されない。

二そこで本件事故に係る訴外倉田の加害行為を理由とする国家賠償法第一条第一項又は民法第七一五条第一項に基づく損害賠償の請求につき検討するに、当裁判所もまた控訴人の右請求は理由がないものと判断する。その理由は、〈中略〉原判決が理由として説示するところと同一であるから、これを引用する。

三してみれば、本訴請求を棄却した原判決は相当で、本件控訴は理由がない。よつて、民事訴訟法第三八四条によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担について同法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(安藤覺 三好達 柴田保幸)

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